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2008年10月9日木曜日

個人の生産性向上


(出典)

http://business.nikkeibp.co.jp/article/nba/20081003/172637/?ml1

第3回 景気後退
2008年10月7日 火曜日 勝間和代
政治・経済  論点  IT・通信 
国内景気が後退局面に入った可能性が高まっている。
戦後最長の景気拡大は、必ずしも日本経済の実力を示すものではなかった。
潮目が変わった今、日本経済の弱点を改善する必要がある。

 2002年2月から戦後最長の景気拡大期が続いていましたが、政府は今年8月に発表した月例経済報告で、景気の基調判断を「弱含み」に下方修正し、後退局面に入ったことを認めました。

 まず、日本の景気拡大は何が支えになってきたかを整理しましょう。ざっくりまとめると、次の3つの要因です。

米国が牽引する世界経済の順調な拡大
ドル高・円安傾向による輸出力の回復
BRICsなどの台頭によるグローバリゼーションの進展
 まずは「ニューエコノミー」と言われる分野の生産性向上などを背景に、米国の景気が力強く伸び、世界経済全体の牽引力になりました。米国市場での販売を伸ばしたトヨタ自動車が、車の生産台数世界一になったというニュースを覚えている人も多いと思います。

 背景には、為替レートが1ドル120円を超えたことがあります。おかげで、様々な輸出企業が韓国や中国、その他の国々に対して競争力を回復し、史上最高益を更新しました。結果、2003年に7000円台をつけた日経平均株価は、2007年には1万8000円台まで回復したのです。

 さらにBRICsの台頭です。特に中国の経済発展は、日本にとっては輸出入の両面から景気を刺激し、経済を支える要因となりました。

 しかし、この3つの要因も、以下の順にひっくり返り、現在の景気後退を招いてしまったのです。

米国のサブプライムローン問題から生じた金融不安
ドル安・円高による輸出の減少
グローバリゼーションを契機とした原油などの商品高
 ここで私たちが自覚しなければいけないのは、2002〜2007年の日本の景気拡大は、単に世界経済の拡大期に、たまたま円安という追い風が吹いた結果であり、日本経済自体の足腰は何も強くなっていないのではないのか、という点です。

 では、日本経済の弱点とは何でしょうか。その一つは、生産性が高い産業と低い産業が極端に分かれる「二重経済」の問題です。日本の生産性はOECD加盟30カ国中第20位、主要7カ国(G7)の中では最下位と低く、その理由がサービス産業の低生産性にあるのです。

 例えば、グローバル市場で戦うトヨタやキヤノンのような製造業は、生産性が低いとそもそも産業として成り立たないため、常に高水準の生産性を実現しています。一方、国内の流通業や飲食業などのサービス産業は、1991年から2005年まで、製造業の年率3.1%に比べ、年率0.3%しか伸びていません(出所:社会経済生産性本部)。

 サービス産業の生産性が停滞しているのはG7諸国も同じです。なぜサービス産業の生産性は低いのか。これには構造的な理由があります。製造業の場合は、諸外国から簡単にモノが輸入されるため、生産性の悪い製品を作っていてはたちどころに市場から駆逐されてしまいます。ところが、サービス産業は国外との競争があまりないため、生産性が悪いままでも生き残れてしまうのです。

 これに加えて、日本の市場は言語による参入障壁が高いため、海外のサービス産業が入りにくく、逆にこちらの産業も海外に出づらいのです。サービス産業で、特に成長を牽引するのは金融業とIT産業ですが、どちらも日本語の壁が成長のボトルネックになってしまっています。

 景気を再浮揚させるためには、この二重経済の弱点をまず克服しなければなりません。私が考える個人単位でできるお勧めの景気対策は、以下の通りです。

●サービス産業を中心としたホワイトカラーの生産性の向上

 これは同じアウトプットをより少ないインプットで出せるようになろうということです。

 ここ10年くらいのホワイトカラーの生産性向上の大半は、IT活用による情報処理の生産性向上が要因です。そして残念ながら、日本は米国に比べるとITへの投資額がGDP比で小さく、技術革新の恩恵を受け切れていません。

 しかし、通信ネットワークや端末といったインフラ面では、日本は世界でも屈指の水準にあります。従って、既にあるハードウエアやネットワークを活用し、社内外の業務の改善を提案することは、誰にでもできると思います。

 何も複雑なシステムを組む必要はありません。社内でメーリングリストを作成したり、社内ブログやSNSを立ち上げたり、あるいは現場の情報を携帯電話のカメラで撮影して集めたり、シンプルでお金のかからない方法でちょっとした情報共有をすればいいのです。

 景気後退に対して、「これがすべてを解決する」という万能薬はありません。ただ、私たち個人のレベルであれば、少なくともITを使いこなすことで、ある程度の自衛は可能です。

 景気の悪い時期は、企業は人材への投資を手控えるようになります。不景気の時期にこそ、個人単位でどういう努力をするかが、個々人の将来の差にもつながってきます。ぜひITをもっと活用し、アウトプットを重視した働き方を心がけてみてください。

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