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2016年9月5日月曜日

第五世代コンピュータ

第五世代コンピュータ(82年~92年)

自然科学系、社会科学系、人文科学系の知識情報処理を行う。

開発したアプリは、法的推論、遺伝子情報処理、大規模集積回路設計支援、自然言語処理、碁世代


総合評価

プロジェクトが与える影響

技術的影響

並列記号処理技術(汎用的な大規模並列処理技術)

知識情報処理技術の基盤技術

その他の技術
第五世代コンピュータ・プロジェクトの開始当初の計画には、その技術目標の実現に関連すると思われたハードウェアやソフトウェア、さらに知識処理の応用など、いろいろな研究課題が挙げられていた。それらの中には、柔軟なマンマシンインターフェース実現を目指した画像や音声処理、自然言語処理技術等も含まれていた。


社会的影響


「知識情報処理に適した新しいコンピュータ技術体系の確立」という未踏の技術目標は、世界の若い研究者の知的興味とロマンをかきたてることに成功した。また、その技術目標は、リスクの大きな創造的技術開発を基礎研究段階から行うものであったことから、国のプロジェクトとして実施するにふさわしいものであった。


(資料)第五世代コンピュータ・プロトタイプ・システムの概要

第五世代コンピュータ・プロトタイプ・システムは、主として以下の要素システムからなる。

1. 並列推論マシン
並列論理型言語 KL1 の実行のために最適化したアーキテクチャを持つ、並列計算機システム

2. 並列論理型言語 KL1 処理系
並列論理型言語 KL1 を効率的に並列に実行するための、プログラム言語システム

3. 基本ソフトウェア
並列推論マシン上での KL1 プログラムの実行を司る、もっとも基本的なソフトウェア。以下のふたつのシステムからなる。

① 並列推論マシン・オペレーティング・システム PIMOS
並列推論マシンのハードウェアを効率的に管理し、並列プログラムの開発に適したソフトウェア開発環境を提供するオペレーティング・システム
② 並列非正規データベース・システム Kappa-P
並列推論マシン上に知識情報処理に必要なデータベース機能を提供するシステム

4. 知識プログラミング・ソフトウェア
知識処理応用ソフトウェアで共通に利用できる基礎的な知識情報処理技術を提供するシステム群。代表的なものに以下の 3 システムがある。

① 並列定理証明システム MGTP
モデル生成型の並列自動定理証明システム
② 並列制約処理言語システム GDCC
制約論理型言語の並列処理システム
③ 知識表現言語システム Quixote
大量で複雑な知識を計算機上で効率良く扱うための知識表現言語システム

5. 機能実証ソフトウェア
並列推論マシンに構築した応用ソフトウェア・システム群。KL1 言語処理系や知識プログラミング・ソフトウェアの諸機能を利用して構築されており、これらのシステムの機能を実証するものである。代表的なものとしては以下の 5 システムが挙げられる。
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① 法的推論システム HELIC-II
新しい事件を対して、判例を用いてさまざま法律適用の可能性を提示するシステム
② 遺伝子情報処理システム
タンパク質配列の類似性解析行なうシステム
③ 大規模集積回路設計支援システム
LSI-CAD の工程中、論理シミュレーション、LSI セル配置、および LSI 配線の工程を並列に実行するシステム
④ 自然言語処理システム
日本語処理システムの研究開発のベースとなる汎用日本語処理系のツール群を提供するシステム
⑤ プログラム自動合成システム MENDELSZONE
宣言的記述から KL1 プログラムを自動合成するシステム
⑥ 棋士システム碁世代
囲碁の対局を行なう棋士システム


http://www.jipdec.or.jp/archives/publications/J0005062.pdf


世間の評価


しかしながら、実際に大量の資金が投じられて完成したのはアプリケーションのほとんどない並列推論システムだけだった。10年と570億円をかけたプロジェクトは、通産省が喧伝した目標についてはまったく達成しなかった。「本来の目標については達成した」としているが、しかし成果が産業に影響を与えることはほとんどなかった。単に、学術振興と人材育成に寄与しただけだったと言えよう。IDC社の William Zachman は「The Japanese Give Up on New Wave of Computers」(International Tribune、東京版、1992年6月2日)で次のように述べている。

AI型の応用の進展を阻んでいるのは、十分な知性を持った AI ソフトウェアが存在しないからであって、強力な推論マシンがないからではない。AI型の応用が既にたくさんあって、第五世代コンピュータのような強力な推論エンジンの出現を待ちわびていると思うのは間違いだ。

また、ファイゲンバウムの談話として同じ記事で以下のように述べられている。

第5世代は、一般市場向けの応用がなく、失敗に終わった。金をかけてパーティを開いたが、客が誰も来なかったようなもので、日本のメーカはこのプロジェクトを受け入れなかった。技術面では本当に成功したのに、画期的な応用を創造しなかったからだ。

経緯
1982年: (財)新世代コンピュータ開発機構(ICOT)設立。第五世代コンピュータプロジェクトが開始され、5年分の予算が与えられた。
1985年: 最初の個人用逐次推論マシン PSI(Personal Sequential Inference Machine、パーソナルPIMとも)とそのオペレーティングシステム SIMPOS(SIM Programming and Operating System)がリリースされた。SIMPOS は Prologにオブジェクト指向プログラミングを取り入れた ESP で記述されていた。
1987年: 複数台のPSIを相互接続した形態の最初の並列推論マシン PIM(Parallel Inference Machine)が構築された。プロジェクトはさらに5年分の予算を与えられた。核となる言語も Guarded Horn Clauses(GHC)に基づいた KL1 にバージョンアップされ、OS は PIM の OS ということで PIMOS と名づけられた。
1991年: 実際に動作する PIM が完成した。
1992年: プロジェクトは当初の予定から一年延長され、この年に終了した。PIMOS のソースコードはパブリックドメインとして公開されたが、PIM でしか動作しないものだったため、KL1 を一般のUNIXマシンで動作させるためのプロジェクトが別途開始された。その成果はKLICとして公開されている。

成果

ハードウェア
PSI(Personal Sequential Inference Machine):シングルユーサー向けの逐次推論マシン
PSI-I:最初の逐次推論マシン。30KLIPS(Logical Inference Per Second、三段論法的推論を一秒間に実行できる回数)。CPUはワンチップ化されていない。
PSI-II:PSI-I のCPUをVLSI化して小型化・高速化したバージョン。
PSI-III:
CHI(Co-operative High-performance Inference machine)
CHI-I:285KLIPS
CHI-II:490KLIPS
PIM(Parallel Inference Machine):並列推論マシン
PIM/p:512プロセッサ(RISC)
PIM/m:256プロセッサ(CISC)
PIM/c:256プロセッサ(CISC)
PIM/k:16プロセッサ(RISC)
PIM/i:16プロセッサ(LIW)

プログラミング言語
KL0:PSIの機械語に相当する言語。
ESP:PSIのシステム記述言語
KL1:並列型言語

オペレーティングシステム
SIMPOS:PSIのOS
PIMOS:PIMのOS

応用例
並列データベースマネジメントシステム Kappa
法的推論システム
並列VLSI-CADシステム
遺伝子情報処理システム
並列定理証明システム

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